CBR1000RR-R Fireblade [TSR-EWC] 解体新書【Vol,2】
2020ル・マンの勝利は必然

2021.06.02レース

Fブレーキダクト 言わずもがな、モーターサイクル耐久レースは、経験とそれに裏付けられた知識と情報を必要とする厳しい競技だと思う。有力耐久レースチームのレースバイクは、効率的とは言えないストックバイクをベースマシンとなっていることが多い。そのため、ホンダが2020年にデザインを一新した新型CBR1000RR-R Firebladeを発表したときも、経験等の不足から耐久レースに参戦するのはしばらく先になると思われた。

しかし、2020年8月30日:サルト(ル・マン:ブガッティ・サーキット)でいきなり勝利!し、シーズン終了時にはランキング3位を獲得してしまった。

その秘密は、Technical Sports Racing(TSR)の経験にあったのではないか。TSRの経験は、耐久レースの経験であると同時に、約60年前から密接な関係にあるホンダとの経験でもある。TSRは、HRCのキットパーツをはじめとする世界最大のメーカーのサポートに加えて、メインスポンサーであるF.C.C.を始め、SHOWA、NISSIN、ブリヂストンといった日本の有力なパートナーとのネットワークを最大限活用してきた。
○出典元:Moto Journal誌(フランス)

2020CBR1000RR-R Fireblade TSR-EWC


ガソリンタンク

ガソリンタンク3CAD図面 タンクのできるまで

アルミニウム製のタンクは、TSRが6分割(上面、左・右、シート下部、底面、前面)で設計し、各プレス部品を溶接して製造している。タンクの容量は23.8リットル(規則では上限24リットル)。タンク自体がシートの下までしっかりと伸ばされていることに注目!!

フューエルフィラー

タンク全景 タンク装着イメージ

カム式ロック機構付きのフューエルフィラー。3秒足らずで24リットルのガソリンを給油することができる。デュアルバルブにより、ガソリンの流入と排出をコントロールする。

トップブリッヂ

TOPブリッジ

トップ・ボトムブリッジ、いずれもTSR製。ル・マンのレース直前まで形状・ボルトの材質についても見直しがされた。

フロントスタンド受け

Fスタンドホール 24時間後のFスタンドホール

これはフロントスタンドのシャフト受け。表面は滑らかに加工してあるが、24時間使えばこの通り。

【フロントスタンド受け開発途中動画】


10 フロントブレーキキャリパー

Fブレーキキャリパー Fブレーキキャリパー ブレーキダクト

NISSIN製のキャリパーはCBR1000RR-Rと共に新型になり、ル・マンの厳しいコンディションに合わせてダクトなど細かいアップデートが重ねられた。ピットワークではキャリパー交換も行い、タイヤと併せても30秒ほどで交換できるようになっている。ブレーキラインのコネクタはストーブリ製。24時間レースでは、冷却エアダクトも装着する。

【欄外コラム】エレクトロニクス

エレクトロニクスは、耐久レースにおいてとても自由度の高い、かつ重要な分野。TSRではエンジニアが独自のコントロールユニットを開発して、マシンコントロール、エンジンブレーキを細かく管理するだけでなく、パワーの伝達や適正な燃料消費を保証するための燃焼の最適化も行っている。
このことは耐久レースにおいて重要なパラメータであり、F.C.C. TSR Honda FranceのCBRは1スティントあたりの周回数が最も多いバイクの1つとなっている。

【エレクトロニクス開発テスト動画】


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