2023 FIM EWC 開幕戦ル・マン24時間【レポート】 完璧なレースで2023年FIM EWC緒戦でル・マン24時間3勝目!〜連覇に向けて好発進

2023.04.17レース

スタート

ポールシッターの#12YOSHIMURA SERTが、スタート直後にジョシュと接触して大クラッシュするという劇的な幕開けとなった2023年のEWCシーズン。ウイークに入ってからは不安定で寒い天候で、土曜日に入りようやく好天に恵まれたものの、スタート時の路面温度は非常に低く慎重さも求められた。接触後のジョシュは、その影響から慎重にならざるを得ず、また早々と現れた周回遅れや序盤から介入したセーフティカーなどもありペースが安定せず、一時は8番手まで順位を下げていた。しかし、トップグループには位置しており、状況が落ち着くと共に順位も回復、続くマイクへはトップでつないだ。

レース序盤のジョシュ
レース序盤のジョシュ。周回遅れやらトップ争いやらでなかなかペースが安定しない

専用のバルブキャップとトロリー設置風景
専用のバルブキャップ(左)とトロリー設置風景

今季からのルール変更で、EWC専用でワンメイクの給油装置(クイックフィルシステム)の使用が義務付けられ、これまでの背の高い2口型のロケット型給油装置は使用できなくなった。この変更により、まずは給油作業自体の見た目が変わったことにまず気付くはずだ。同時に給油およびガソリンの取り扱いを含む運用面でも厳格なルールが定められ、給油装置は専用のトロリーによりピット内の決められた位置に設置することになった。(2023年の鈴鹿8耐についてはこの規則は適用されず、昨年のルールが適用される)。

ガソリンタンクのバルブにはキャップの装着が義務となり、TSRでは各ライダーが各自で所持して取り外しと装着を行うことにした。手の中に収まるくらいのキャップなので見えにくいが、ピット作業などでよく見ると手に持って脱着したり、キャップが装着されている様子が分かるだろう。

#37とバトルを展開するアラン
#37とバトルを展開するアラン

マイクの走り
ライダーは3人共冷静かつ安定した走りでベストタイムを刻んだ

トップをキープしたマイクがアランにそのままトスする頃には、#37BMW Motorrad World Endurance Team、#7YART YAMAHAとの3台によるトップ争いが激化していく。このバトルは、決勝レースの最初の重要な節目である8時間経過直前まで続いた。しかし、#37BMWがクラッシュで、#7YARTがメカニカルトラブルでそれぞれ順位を下げたことで一旦決着が付き、F.C.C. TSR Honda Franceは8時間をトップで通過し、10ポイントを獲得した。とはいえ、チームも無傷だったわけではなく、マイクが8時間を目前にして黄旗違反(追い越し)によるストップ&ゴーのペナルティーを受けてしまうわけだが…。

その後、12時間経過までにはマシンがコース上に残ったことによるセーフティカーの介入があったくらいで、チームとライダーは順調にルーティンをこなし、2位以下に2周以上の差を付けてトップを譲ることなく独走していく。こうなればもはや自らとの戦い、誰もが集中力を切らさないようにしなければならなかった。

夜間走行
移動遊園地が隣接されるのも耐久レースならでは。夜間照明が美しい。

ライダー交代時のジョシュ
給油キャップをテーマ?にストレッチをするジョシュ。

さらに、夜明けとともに忍び寄ったのが濃い霧だった。路面は滑りやすくなり、多くのライダーが足元をすくわれるリスクを抱えながらの周回を余儀なくされた。その中で、F.C.C. TSR Honda Franceの#1CBR16時間経過もトップ通過、ここまでで予選から23ポイントを積み上げ、残る8時間でル・マン制覇に向けて走り続けた。

深い霧
夜が深くなるにつれて少しずつ発生していた霧が夜が明けるとより深くなった。

フィニッシュ
トリを務めたのはやはりマイク。拳を突き上げてフィニッシュ!

レース終盤の4時間、F.C.C. TSR Honda France #1の3人のライダーたちは、常にベストタイムを記録し、チェッカーフラッグを受けるまで完璧な走りでリードを保って827周を走破。最後のスティントを任されたマイクが自身3度目、チームも3度目となるル・マン24時間優勝のチェッカーを受けた。

冷静でステディな走り、知的なレースマネジメントと、コース上とピットでの圧倒的な優位性により、レースの大半をリードしていたF.C.C. TSR Honda France #1は、最も美しいと思われる形で勝利を手にした。この結果、F.C.C. TSR Honda Franceチームは、24時間レースにおけるフルポイント65点中、63点(レース40pt、8時間・16時間経過各10pt、予選3pt)を獲得し、チャンピオンシップ・リーダーとなった。6月17日〜18日に決勝レースが開催されるFIM EWC次戦、SPA EWC MOTOS 24Hでさらにリードを広げ、自信を持って日本に戻れるようにしたい。

フィニッシュ直後のライダーたち
表彰を前にマシンの前で勝利を喜ぶ3人。満足の表情だ。

表彰台
もはや言葉は不要。ル・マンのトロフィが日本に渡るのも3度めとなる。銘板には歴代優勝の年号とチーム&ライダー名が刻まれている。ちなみに要返却です。

 

【コメント】
○チームマネージャー藤井正和

『日本人として、鈴鹿8耐は私のホームですが、ル・マンもとても特別なレースで、チームにとってもホームのようなものです。ここで勝てたことは信じられない気持ちです。フランスの人たちが大好きです(*´`*)♡』

○ジョシュ・フック – ブルーライダー

『昨年は未勝利でチャンピオンになったが、我々は勝ちたいし、自分たちがベストであることを示したいので、2023シーズン初戦でここで勝てたことは信じられない! 勝利のパッケージを作り上げたチームに祝福を送りたい。マシンは完璧で、これ以上を望む必要もなかった。運も良かったけど、この冬に行ってきた作業を考えれば、当然の結果だろう。24時間レースで、マシンもピット内でもコース上も、何の問題もなく走れることは滅多にないことだ』

○マイク・ディ・メリオ – イエローライダー

『素晴らしいレースだった。冬の間、懸命に働いてくれたチームのおかげで、マシンは完璧で、すぐに速くなった。ただ、とても寒く、コース上では何人かのライダーと大きなギャップがあり、ミスが起こりやすい状況だったので、集中力を切らさないようにしなければならなかった。しかし、ピットではチームがよく頑張ってくれたし、シーズンを勝利でスタートできたことは素晴らしいことだ!とはいえ、これからが一番大変なんだ。この先もできるだけ多くのポイントを獲得して、このナンバーワンを維持することだよ』

○アラン・テシェ – レッドライダー

『24時間レースで優勝するのは2回目ですが、僕にとってはすごいことなんです。2018年に同じF.C.C.チームでここで優勝して、シーズン終盤にタイトルを獲得しましたが、再びその表彰台の頂点に立てたことをとても嬉しく思っています。信頼してくれたホンダ、藤井サン、チームメイトに本当に感謝したいですし、今年もタイトルを獲りたいと思います!』

 

【ジーノ・リアのオナラブル・パレードについて】

奇跡の回復によりブガッティ・サーキットに登場したジーノ・リアは、レースのスタート前、まずグリッドに整列したライバルとそのチームから祝福を受けるように、整列した横を市販Honda CBR1000RR-R Firebladeを駆って通過、そのまま、ダンロップカーブに向かって拍手と声援を受けながらサーキットを1周した。

ジーノのパレードラップ
奇跡の回復具合を見せたジーノのパレードラップはブガッティ・サーキット1周

パレードのジーノ
サーキットは温かい拍手で迎え入れた

『チームと一緒にここにいることができて、とてもうれしい。もちろん、パレードラップをするのはとてもいいことだけど、レザースーツを着てここでレースをしたいとも思うから難しい気持ちだね』
怪我から完全に回復するまでの間も、ジーノは来る24 Heures Motosに出場することを望んでいるという。

決勝レース正式結果
EWC Teams Standing
EWC Manufacturers Standing

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