愛車のキャリパーピストンは何製? 熱伝導率による「せめぎあい」

今回は、熱伝導率についてのお話です。
“熱の伝わり易さ” をあらわす数値で、数値が大きいほど温度変化が早い。
これがバイクとどう関わってくるのでしょうか?

熱伝導率の差による違い

以前、カップアイス専用スプーンが流行ったのを覚えてますか?
あれは、指先の体温でスプーンの温度を上昇させ、アイスを溶けやすくしてるんです。
これが「熱伝導率が高い」現象です。

ちなみに、このアイス専用スプーンはアルミで出来てました。
アルミは、貴金属を除いた、身近な金属の中でトップクラスに伝導率が高いんです。

■金属の熱伝導率一覧

材質熱伝導率
W/(m・k)
427
398
315
アルミニウム   237
タングステン178
マグネシウム156
シリコン148
モリブデン138
ナトリウム132
ベリリウム鋼126
亜鉛121
黄銅110
カリウム102
コバルト99.2
カドミウム96.8
材質熱伝導率
W/(m・k)
ニッケル90.5
クロム90.3
80.3
りん青銅79.5
リチウム76.8
白金71.4
すず66.6
ゲルマニウム   59.9
トリウム49.1
35.2
洋白28.8
ウラン27.6
チタン21.9
ステンレス21.2
マンガン7.82

では、アルミのマグカップやタンブラーに熱湯を注ぐとどうなるか?
カップはすぐさま熱くなり、カップに熱を奪われたお湯はどんどん冷めていきます。

じゃあ逆に、熱伝導が低い(悪い)チタンのマグカップやタンブラーはと言うと…
熱湯を入れてもカップは熱くならないし、カップに熱を奪われないからお湯も冷めない。

ってなわけで、熱伝導率によって向き不向きがあるわけです。

キャリパーピストンの材質は何がイイ?

では、ここからはバイクの話です。
レース用キャリパーにはチタンのピストンが使われてます。

「熱伝導率が低いから」という理由は、話の流れで想像つきますね。
じゃあ、熱伝導率が低いとなぜイイのか?

それはベーパーロック対策になるから。

motorockman

ベーパーロックは、ブレーキフルードが沸騰する現象。
ディスクとパッドの摩擦熱が高くなりすぎて、熱がピストンを伝わりフルードが沸騰する現象です。

モトGPのカーボンディスクは、市販のステンレスディスクよりもさらに高温になります。
フルードへの攻撃性はもっと高いわけです。

そこで熱伝導率の低いチタンピストンの登場!
パッドの熱をフルードに伝えにくくするわけです。

じゃあ、アルミピストンを使ってることがある市販車はダメじゃんってなりますよね?
いや、ホントその通り。

それが原因か定かではないですが、ZZR1400のリヤキャリパーがアルミピストンだったのが、ZX14Rにフルモデルチェンジして鉄ピストンになってるんです。
重量車のリアは熱的に厳しいですからね。

鉄の1/3の軽さで、サビにも強いアルミピストンか、熱電動率の低い鉄ピストンか。
ーカー開発陣のせめぎあい、といった感じですね。

motorockman

ペーパー(paper)ロックと間違えてる人が多い。
ベーパー(vapor)が正解。紙じゃないですよ。

この記事を書いた人

パーツメーカーやレースチームの黒子として多くの開発実績を持つ実力派エンジニア。また「バイクをカッコよくする」をテーマに、プロの技術と知識をブログやSNSで惜しみなく発信中。