ボルトの1級化カスタム、その効果とは?

ネジ山には“等級”というものがあります。
簡単に言えば、ネジ山のガタやクリアランスを管理する規格。
等級は1~3級まであり…

・1級 → ガタが少ない
・2級 → 一般的
・3級 → クリアランスが大きい

というイメージ。
なお、バイクや車を含め、世の中の工業製品の大半に「2級」が使われています。

実は2級ネジ穴に1級ネジは入る!?

一般的には、ネジとネジ穴は同じ等級で組み合わせて使われます。
でも実際には、2級のネジ穴に1級ネジを組むこと自体は可能なんです。

実はウチでも、当初は1級ネジでの製作を考えていました。
ガタが減れば、位置ズレ・芯ブレを抑えられることできるから。

ただ、実際に検討・実践を行うと、メリットだけではありませんでした。

「1級ネジ = 高性能」とは限らない

1級になるとクリアランスが減るぶん、面摩擦が増えます。
そうなると…

・カジリ
・組みにくさ
・整備性低下

といった問題が起こりやすくなります。
特にアルミ相手のときはヤバイです。

そして何より問題なのがコスト!
1級も2級も作業工程自体はほとんど変わりません。
でも製作現場では、スタンダードである2級前提で転造機を管理してる。
それを一社のために1級に調整するとなると、大幅な単価アップは避けられません。

もう1つ言うと、ガタが減っても締結力アップにはなりません。
ネジの締結力は、以下の4つの要素で決まります。

・摩擦
・潤滑状態
・座面状態
・締付トルク

1級になったことで増える摩擦程度では締結力はほとんど上がりません。
そのため、1級化にしたところで締め付けトルクはかわりません。

むしろグリスアップの方が影響が大きいです。
それに関してはまた今度紹介します。

ボルトの役割とは?

ガタを減らすことは、確かに精度面では有効です。
では、なぜ精度が必要なエンジンに1級が使われていないのか?

それは、ノックピンの仕事だからです。

・ボルト → 締結
・ピン → 位置決め

それぞれの役割があるんです。
それをネジだけで精度を出そうとすると…

・組付性悪化
・カジリ
・コスト増

こういった問題が増えることになります。
だからこそ、現在でも工業製品の大半は2級ネジが使われています。

「普通だから2級」ではなく、
実用性を考えた結果、2級が標準になっているんです。

結論

ボルトカスタムなら、1級化よりも

・8.8 → 12.9の高強度ボルトに変更
・スチール → チタンに変更
・錆びたボルトを新品に交換

といった方が有効です。

この記事を書いた人

パーツメーカーやレースチームの黒子として多くの開発実績を持つ実力派エンジニア。また「バイクをカッコよくする」をテーマに、プロの技術と知識をブログやSNSで惜しみなく発信中。