摩耗はチタンの唯一の弱点!

チタンの真実・第7弾「チタンは硬い! でも実は…耐摩耗性が悪い」

チタンは「軽い・強い・錆びない」という優れた金属です。
でも、ひとつ大きな弱点があります。
それが 摩擦に弱い(=耐摩耗性が低い) という点です。

ボルトや摺動部で使用すると、以下のようなトラブルが起きることも

・回らなくなる(焼き付き)

・固着する(かじり)

・最悪、破損する

なぜチタンは耐摩耗性に劣るのか?
それは以下の原因によるもの。
 
・凝着摩耗しやすい金属だから
・不動態被膜が破壊されるから

では、具体的な理由と対策について説明いたします

そもそも摩耗とは?

一般的に「摩擦によってすり減ること」と思われがち。
でもチョット違うん。正しくは…

「接触している物体同士の相対運動によって、材料が徐々に失われる現象」

つまり、摩耗には摩擦だけでなく「滑り」「転がり」といった原因もあるんです。

なお、摩耗には以下の4種類があります。

・凝着摩耗 → くっついて剥がれる

・研磨摩耗 → 硬い粒で削られる

・疲労摩耗 → 繰り返しで表面が壊れる

・腐食摩耗 → 化学反応

このうちチタンが苦手とするのが 凝着摩耗

凝着摩耗とは?

金属の表面には、微小な凸凹があります。
接触した金属に圧力がかかると、互いの凸凹同士が結合します。
これが凝着

凝着した状態で滑り運動 がおこると結合部の凸凹がむしりとられ、やせてしまいます。
これが凝着摩耗

なお、互いに摩耗する場合もあれば、片側だけの場合もあります。
多くの場合は、表面が柔らかい側、組織が弱い側が摩耗します。

でも、チタン(Ti-6Al-4V)は硬度が比較的高い金属。
数値的には摩耗に強いはず。
にも関わらず凝着摩耗が起こるのは、凝着しやすい性質を持ってるから。

なお、チタンの場合、自身だけでなく相手もダメにするケースが多い💦

チタンが凝着しやすい理由 ①

1番の理由は、チタンが活性金属 だから。
活性金属は水や酸に簡単に反応して溶けてしまうんです。

薬やサプリに使われるカルシウム、マグネシウム、亜鉛といったものも活性金属です。

つまり活性金属は、それだけ水や胃酸に溶けやすい性質というわけです。

チタンは普段、不動態というバリアに守られてるから水や酸に強いです。(※)
でも、不動態が破壊されるとメッチャ弱くなり、凝着が起こってしまうわけです。

(※) 不動態についてはこちらの記事で紹介しています

👉 なぜチタンは錆びないのか!?
👉 チタンは大事なバイクを腐食から守る

チタンが凝着しやすい理由 ②

では、酸にも強い不動態がどうして壊れるのでしょうか?
それはチタンの 熱伝導率が低い のが原因。

温まりにくく冷めにくいという性質のため、擦れ合う部分が局所的に高温になってしまいます。
それにより不動態が破壊されてしまうわけです。

なお、チタンに限らずボルトのカジリはこの凝着摩耗によって起こります。
詳しくはこちら をご覧ください

👉 カジリやすいボルトとカジリにくいボルト

対策 ①:表面硬化(最も効果的)

凝着摩耗を防ぐには、まず「くっつかせない」こと。

そのために有効なのが表面硬化です。

目安としては 👉 1000HV以上の硬度

・DLC(ダイヤモンドライクカーボン)

・イオンプレーティング(PVD)

やはり、この2つが有効です。

特にDLCは優秀で、くっつかない要素が満載♪

・高硬度 → 最高硬度

・低摩擦 → 表面がナノレベルで滑らか

・非凝着 → 炭素被膜なので凝着しない

対策 ②:潤滑(現場での基本)

もうひとつは、シンプルに潤滑です。

・スレッジコンパウンド

・モリブデングリス

これらにより、凝着そのものを防ぎます。

ただし注意!トルク管理が不安定になる

トルクレンチって、締結力(軸力)を直接測ってません。
実は、摩擦(抵抗)から締結力を推定してるんです。

締結力の大半が「摩擦」に消える

ねじの摩擦:約45%

・座面の摩擦:約45%

・本来の軸力:10%

なので…
「グリスを塗る → 摩擦が減る → 締りすぎる」といったことに。
さらに、塗る量によって摩擦にバラつきがでます。

従って、グリスの塗り方にもテクニックがいるわけです。

ドライ潤滑コーティングという手も

トップチームの中には、チタンボルトにドライ潤滑コーティングを施してるところもあります。
このメリットは…

・被膜のため摩擦係数が一定 → トルク管理が安定

・乾式被膜のためゴムが付着しない


ちなみにモトロックマンでは、DLC、ドライ潤滑コーティング、どちらも用意しております。
値段は高いがいいボルトです♪

ドライ潤滑コーティング

この記事を書いた人

パーツメーカーやレースチームの黒子として多くの開発実績を持つ実力派エンジニア。
また「バイクをカッコよくする」をテーマに、プロの技術と知識をブログやSNSで惜しみなく発信中。