チタンは強くて “しなる” 金属

チタンの真実・第6弾「チタンは強い、でも実は…剛性はイマイチ」

強度と剛性を同じものと考えてる人が多いです。
強度が高いものほど、剛性も高くなるのが一般的だから。

特に金属はその傾向が高い。
そんななか、チタンは強くて “しなる” という特殊な金属なんです。

強度と剛性の違い

チタンの説明前に強度と剛性について簡単に説明します。
まず、強度を図にすると…

 

引っ張る力に対する強さ、壊れにくさが 強度
従って、強度のことを「引張強さ」とか「引張強度」と言います

次に剛性を図にすると…

 

曲げやねじりに対して変形のしづらさが 剛性
従って、曲がりにくいほど「剛性が高い」ってことになります。

金属の強度と剛性

上は金属の機械的性質表です。

引張強さが強度を表し、数値が大きいほど強度も高い。
ヤング率が剛性を表し、数値が大きいほど曲がりにくい。

冒頭でも述べましたが、強度が高いものは剛性も高いことが確認できます。
でも、チタンはちょっと違う。

Ti-6Al-4V(表の下から2番目)とクロモリ材・SCM435(上から4番目)を比べてみてください。
強度がほぼ同じなのに対し、チタンの剛性はクロモリの半分しかないんです。

剛性×耐力(降伏点)

チタンはクロモリの約半分のヤング率ですが、簡単にしなるわけではありません。
実際には、さらにヤング率の低いアルミのほうが、はるかにしなりやすい特性を持っています。
この位置づけで言えば、アルミが低剛性、チタンは中剛性になります。

ここで言う「しなる」とは、元に戻る 弾性変形 のことを言います。
そこからさらに強い負荷がかかると、元に戻らない 塑性変形 (永久変形) へと移行します。

この “戻る/戻らない” の境界線を示すのが 降伏点 (耐力) です。

従って、低剛性で高耐力のものはバネっぽい特性をもつわけです。

チタンもこの領域にある材料。
剛性の低さは弱点ではなく、特性の1つなんです。

まとめ

最後に、材質ごとに性質をまとめてみました.

■アルミ(A2017)
強度:425 MPa
剛性:69 GPa
耐力:275 N/㎟

  ⇩

中強度・低剛性材

■チタン(Ti-6Al-4V)
強度:900 MPa
剛性:106 GPa
耐力:845 N/㎟

  ⇩

高強度・中剛性材

■クロモリ(SCM435)
強度:930 MPa
剛性:212 GPa
耐力:785 N/㎟

  ⇩

高強度・高剛性材

クロモリボルトはチタンボルトよりも若干強度が高い
でも、耐力的に先に永久変形を起こすのはクロモリ

では、ボルトとしてどっちが優れているのか?
それは「どう締結力を維持させるか」という用途によって異なってくる

チタンボルト VS クロモリボルト

■クロモリボルト(SCM435)
・伸びにくい
・締結時の伸びが小さい
・外力で緩みやすい方向
👉ガチっと固定したい用途向き

■チタンボルト(Ti-6Al-4V)
・よく伸びる
・スプリングみたいに効く
・締結力が安定しやすい
👉振動・疲労に強い

こういった特性からチタンボルトはバイクの振動を軽減してくれる相性の良いものと言える。
ただし、部位によってはNGになることも。

例えば2ピースキャリパーのブリッジボルト。
ボルトのしなりによって、キャリパーが広がり、制動力が逃げてしまう恐れがある。

エンジンマウントも剛性によってフレーム特性が決まるので、しなることで挙動が変わってします。
設計バランスが崩れる可能性があるが、ただそれが悪化の傾向になるとは言い切れない。

アクスルやサスペンション周りに関しては、現在は剛性を重視されている。
ただ、タイヤの追従性を考えると “しなる” アクスルも完全否定はできない。

実際、チタンアクスルでタイムが縮まった話も聞いている。
レギュレーションでチタンアクスルが解禁された場合、使用してくるチームも少なくないのでは。

この記事を書いた人

パーツメーカーやレースチームの黒子として多くの開発実績を持つ実力派エンジニア。
また「バイクをカッコよくする」をテーマに、プロの技術と知識をブログやSNSで惜しみなく発信中。